小児歯科を専門または中心に開業している歯科医組織 全国小児歯科開業医会 JSPP

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小帯に関する考え方

小帯(上唇小帯や舌小帯)について

小児歯科医が赤ちゃんについて受ける相談に、小帯に関することがよくあります。

など、切除するべきかどうか、と、切除するならその時期についての2点に関するものがほとんどです。

お子さんの小帯の状態により、処置の方法や時期は様々で、決して同じではありません。
また診察したうえでなければ、対処法や処置の時期を申し上げることはできません。
ご心配なら、小児歯科専門医や乳幼児を多く診ておられる歯科医師に、相談されることをお勧めします。

ここでは不安を抱えておられる保護者の方へ、小帯の処置に関する目安の一つとして、また注意していただきたい事柄について、全国小児歯科開業医会の考えを示しておきます。

<上唇小帯の異常による影響として>
  1. 歯に汚れがたまり、むし歯になりやすい
  2. 歯並びや咬み合わせに悪い影響を与えることがある
  3. 母乳をうまく飲めないことがある

<上唇小帯の異常による影響として>

  1. 飲み食いが上手く行えないことがある
  2. ことばの発音に支障をきたすことがある
1.上唇小帯異常の場合

小帯がかなり短いと、上あごの発育を抑制することがあり、歯並びに悪い影響を与えることもあります。
また上の前歯の間に隙間ができることがあります。
歯磨きがしにくく、汚れがたまりやすくなり、前歯にむし歯ができやすくなります。
歯ブラシをするとき、小帯が傷つきやすく、歯磨きを嫌がることもあります。

上唇小帯の影響で汚れがたまりやすくなり、軽度のむし歯ができています(歯ぐきの際が白く濁って、初期むし歯ができている)

真ん中の歯2本を磨こうとすれば、歯ブラシで小帯を傷つけてしまいます。 これも歯磨きをされるのを嫌がる原因の一つです。
上の前歯を磨くときは,乳中切歯(真ん中の歯)を2本磨こうとせず、左右それぞれ一本ずつ磨くようにしましょう。 そして歯ブラシの動きも、左右に動かすのではなく、小帯の襞(ひだ)に沿って斜めに動かすようにすれば、小帯を傷つけることはありません。

2.舌小帯短縮症の場合

早期に切除が必要でなければ、発音や歯列に影響が及ぶかどうかを見て、切除が必要かどうかや切除をする時期を決めるようにします。
その理由は、月日の経過とともに、小帯の状態が徐々に改善され、切除の必要が無くなることもあるからです。
ただ、授乳に影響がある場合は、赤ちゃんの成長にかかわるため、早めの処置が必要なことがあります。
早期に切除が必要な場合には、上唇小帯や舌小帯が短いことで、赤ちゃんが母乳をうまく飲むことができないようなケースがあります。
母乳がうまく飲めない場合、母親の乳頭が陥没していたり、扁平であることに原因があることがほとんどです。
しかし、母親のほうに問題がなくても、上唇小帯や舌小帯に問題があって、乳首を深くくわえこめなかったり、充分母乳を絞り出せなかったりすることがあります。
このような場合は、赤ちゃんの成長に影響があったり、お母さんにも乳腺炎などの被害が出ることも稀にはあります。
小帯に問題があるとはっきりした時は、切除することも検討します。

授乳期に小帯が短くて心配される場合

舌小帯が短いと、乳首をうまく押し上げられず、母乳が飲みにくいこともありますが、飲み続けていると舌小帯が伸びて、授乳に支障が無くなることも多々見受けられます。
急いで切除を考えず、助産師さんたちとの連携のもとで、授乳の様子を見てからの判断が望ましいと思われます。
何とか母乳を飲んでくれていれば、小帯が少しぐらい短くても、あまり気にすることはないでしょう。
上唇小帯が原因で母乳をうまく飲めていないときの、口元の様子を以下の写真で示しておきます。

ある小児歯科医はこのようなケースでも、助産師による母乳の与え方の指導を受けてもらい、それでも授乳がうまくいかない場合などに限り、小帯の切除を行うようにしているとのことです。
上唇小帯や舌小帯が少し短いからといって、必ずしも母乳が飲めないということではありません。
助産師や小児歯科医とよく相談して、判断されることをお勧めします。

小帯の処置の方法や処置の時期に対する考え方も、決まったものではないため、相談に乗っていただける小児歯科医とよくお話をされた上で、納得のできる方法を選択して下さい。

言葉の発音について、支障をきたす場合

舌がうまく動かなければ、発音に支障をきたします。しかし日本語は英語などと比べると、舌をまいて発音することが少ないので、支障の程度はやや少なくて済むと思います。
少し発音に問題がある程度で済んでいるのなら、治療に理解もできる年齢まで待つことがよくあります。
しかし日本と比べて欧米では、舌小帯が短いと発音しにくいことが多いため、早めに小帯を切除する傾向にあるようです。
歯並びに関しては、顎の発育への影響や歯列への影響を考えて、処置の方法や時期を決めるようにします。

このように、小帯の処置については、その状態やお子さんの年齢また協力度の違いで、方法や時期が異なります。
必ず切除しなければいけないとか、切除の必要はないとは決して言い切れるものではありません。
ここにお示ししたのは、あくまでも小帯異常の一部です。
舌小帯の切除をしなくても、舌の機能訓練を行うことで、小帯が伸び切除の必要が無くなることもあります。
また、舌小帯が短いと、話すときにうまく舌が動かず、滑舌が悪くなることがあります。
また物を食べるとき、舌が上に持ちあがらないため、食べ物を口の中でうまく回せず、正常な嚥下機能がはたせないこともあります。

心配な方は小児歯科に精通された歯科医師に相談の上、対処されることをお勧めします。

機能訓練をすれば、小帯に改善がみられることも多いのですが、どの歯科医院でも行っているわけではありません。
わたしたちの会では、多くの会員が機能訓練を実施できるよう、努力を続けてまいります。

印刷をして患者様に配られる際は、下記リンクのPDFファイルをご利用下さい。